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 ところで、環境問題ってなんだろう?


ホタルやトンボが棲めるビオトープは、
蚊にとっても棲み心地がいい。

 

 環境問題に関心を持って社会と接しているとビオトープという言葉を耳にすることも多くなりました。ビオトープとは都市のなかに自然の空間を取り込んだり、再現していこうという考え方です。
 都市は人間の暮らしを最優先させた空間です。そのため、経済活動が活発になり人口が増え、さらに都市空間が増殖、発展するという道を歩んできました。
 しかし一方で、“コンクリートジャングル”に棲む都会人は、息苦しさを感じるようになってきました。酸欠状態の池に棲む魚のように、口をパクパクさせてもがいているような状態です。
 「これは、人間の暮らしを最優先させた空間ではない」と気がつきはじめたのです。人間らしく生きるには、新鮮な空気や水、目にやさしい緑、四季の移り変わりを感じさせてくれる草花、つまり自然との関わりが大切だと再認識させられたのです。

動植物と共存できる自然をつくる
 

 自然との関わりを求めて、都会人の多くが山や海の行楽地に出かけます。また、郊外に自然公園なども整備されるようになりました。酸欠状態から脱して、胸一杯新鮮な空気を吸い、心も体もリフレッシュする必要があるからです。
 できることなら、日頃暮らしている身近なところにリフレッシュできる空間があれば、活力の源になるでしょう。“コンクリートジャングル”の中にある公園や緑道などは貴重な存在です。でも、これらの公園は人間のためにだけつくられた“自然”です。さらにもう一歩進めて、他の動植物たちとも共存できる“自然”がつくれないのだろうか。これを実践したのがビオトープです。
 すでに、東京都野鳥公園のように何ヘクタールにもおよぶ大規模なものから、住宅地の公園、個人住宅の庭など小規模なものまで、さまざまなスタイルでビオトープが試みられています。なかには学校のプールを活用したものもあります。
 生活排水が流れ込みドブ川となっていた川を、かつての清流に蘇らせ、ホタルやトンボが棲める川にしようと、地域の人たちが奮闘している姿が紹介されることがあります。ビオトープの事例として分かりやすいからでしょう。
 ホタルやトンボが生息できるようにするには、生態系を無視することはできません。生息に適した水質を維持し、幼虫のエサとなる生き物や植物もそこには必要です。そうした環境が整うと他の生き物も集まってくることになります。なかにはホタル、トンボの幼虫をエサにする生き物も含まれます。また人間に嫌われるヤブ蚊も発生することでしょう。
 川を取り巻く小宇宙ともいえる環境のなかで生き物たちの生存競争が展開され、勝ち残ったホタルやトンボだけが、われわれ人間の目に触れ癒しを与えてくれます。
 こうした生態系のバランスが崩れるとビオトープはうまく機能しなくなります。そのため、ホタル、トンボに人間が力を貸して幼虫のエサを補充したり、天敵を間引いたりすることはできます。でもそれには限界があるし、やりすぎると人間のエゴのために生態系を壊してしまうことにもつながります。
 理想的なのは懐の深い包容力のある、豊かな自然を維持する努力をしていくことではないでしょうか。


ビオトープは都会のオアシスである
 

 私は一度だけ、まさに“蛍の光”で読書ができると思われるくらいのホタルの大群と遊んだ経験があります。それは、都会でもなくビオトープでもありませんでしたが、新潟県長岡市郊外の山裾にある旅館に泊まった時のことでした。
 10数年前のことですが、旅館の前に小川が流れ、水田が広がっていました。日が落ちて暗くなる頃から、ポワッとした灯りが飛び交い、そのうち火柱と表現しても大げさでないくらいの光の渦になりました。
 その光の渦に頭から突っ込んでいくと、ひととき灯りが弱まるのですが、すぐまた強まり、私は渦のなか。腕や頭にホタルが止まりポワッポワッと灯りを発しています。この幻想的な気分はいまでも忘れることができません。
 旅館の主人に聞くと、ホタルが戻ってきたのは前の年からで、無農薬米が話題になり、農薬を減らしたからだといっていました。主人もホタルの大量発生に驚くとともに喜び、地元の新聞に連絡したそうです。
 「ホタル戻る」の記事が大きく掲載され、多くの人がホタル狩りにやってきて、3日間ほどでほとんどホタルがいなくなってしまった。それに落胆して、今年はどこにも連絡しないことにしたということでした。私は非常にラッキーだったわけです。翌年以降どうなっているか聞いていませんが、農薬を復活させないかぎり、ホタルが舞っていることでしょう。
 この幻想的な体験が強く残っているせいでしょうか、都会のビオトープでホタルの棲める川を実現させて、ホタルをみたことのない子供たちも同様な体験ができたら、どんなに素晴らしいかと思います。
 ホタルをはじめとした昆虫だけでなく、野鳥や小動物も棲めるビオトープは都会のオアシスになるはずです。でも、ホタル、トンボは歓迎するけどヤブ蚊、ハエはいやだ、メジロやウグイスには来て欲しいがカラス、ドバトは向こうに行ってな、リスや野ウサギは愛嬌があるがネズミ、モグラは気持ちが悪い、ましてやヘビ、ヤモリは絶対ダメ、と人間の勝手で生き物を選り好みできないのが自然というものです。
 「すべてを受け入れよう」といっても現代の都会人には難しい側面があるのも現実です。しかし、自然には包容力がありすべての動植物を受け入れます。その自然環境に適応して生きられるかどうかは、個々の動植物の能力と努力しだいなのです。太古の時代、人間もそうした仲間の一員でした。
 いま、人間はある程度まで自然をコントロールする知識や技術を持っています。土木技術から遺伝子工学まで人間が“進歩”と呼んで取り組んできたものは、すべて自然をコントロールするためのものだったといってもいいのかも知れません。
 ビオトープについても、“コンクリートジャングル”でもがく人間を救うための自然コントロール技術なのです。この技術を“進歩”させるには、選り好みしないですべての動植物と共生していく心構えが必要であり、自然環境に対する認識を見直すしかありません。