海外情報

第13回定期会議報告

欧州断熱材製造業者協会(EURIMA)との第13回定期会議報告

環境委員会
副委員長 神谷 健二
主査 松 岡 修

硝子繊維協会環境委員会は、平成19年10月17日~18日の日程にて、昨年のプラハから、今回は、札幌市にあるシェラトン札幌ホテルに会場を移し、欧州のEURIMA(欧州断熱材製造業者協会)と硝子繊維協会(GFA)/ロックウール工業会(RWA)との第13回定期会議を開催した。 今回もオブザーバーとして米国のNAIMA(北米断熱材製造業者協会)代表が参加した。以下はその会議の要約である。

 

●日 程:平成19年10月17日(水)~18日(木)
●場 所:シェラトン 札幌ホテル
●出席者:(総計:24名)

○ EURIMA(4名)

Mr. Jan te Bos(ヤンテボス氏:新専務理事)
Mr. H. Biedermann(ビーダーマン氏:前専務理事、国際業務コンサルタント)
Dr. O. Kamstrup(カムストラップ氏:ロックウールインターナショナル社)
Mr. A. de Reydellet(ドレイドレー氏:サンゴバン社)

○ 硝子繊維協会(GFA)-環境委員会(7名)

狐塚委員長、神谷副委員長、筱生・松村・佐藤各委員、西尾専務理事、松岡

○ ロックウール工業会(RWA)-環境委員会:(9名)

朝生委員長(JFE)、富田主査(NA)、宮崎専務理事、大沼委員(NTB)、永田委員(NRW)
山田委員(JFE)、近藤委員(TM)、奈良委員(DK)、朝賀委員(A&A)
注:社名略称 JFE -JFEロックファイバー、NA-ニチアス、NTB-日東紡、NRW-日本ロックウール、大建-大建工業、A&A-エーアンドエーマテリアル、を示す。

○ NAIMA (1名):Mr. K. Menzer(メンツァー氏:会長)
○ 特別ゲスト(1名):(財)日本建材・住宅設備産業協会 鈴木 晴郎調査部長
○ 通訳:高塚、河野(2名)

 

4.会議議事次第及び要旨

 

4.1 挨拶

 

A. 日本代表:狐塚GFA委員長

EURIMAならびにNAIMAの皆さんにこの札幌で再会できてうれしく思っております。約束通り新しいリーダーのヤンテボスさんと共にビーダーマンさんも一緒に来て頂き、お礼申し上げます。EUは、加盟国の増加により、今まで以上に政治、経済、特に環境面での存在感を増しつつあることをこの会議を通じて感じております。
最近の日本のトピックスですが、建築基準法の改正により、住宅着工件数が前年比で7月23%、8月43%の大幅減となり、官による不況として大きな問題になっており、落ち着くまでには時間が掛かるものと思われます。
もう一つは、安部首相の引退と、福田新首相の誕生で200年住宅という住宅の長寿命化が主張されており、冷え込んだ市場の変化の要因になることを期待しております。
今回の会議では、RW工業会のご尽力により特別ゲストによる講演も予定されており、国の省エネルギー対策の紹介や業界へのアドバイスが頂けるものと思います。
今回の会議が有意義なものになることを祈念しております。

 

B. EURIMA代表:

ユーリマ代表に異動があり、先ず前任者のビーダーマンさんより挨拶があった。

ビーダーマン氏(前専務理事)

昨年末に専務理事を引退しましたが、引き続きユーリマの国際関係業務を手伝っています。ご存知のようにロックウール、グラスウールの海外業界団体とネットワークを組んでおり、昨年は始めて中国の業界とコンタクトを取ることが出来ました。
会議設立準備期間以来14年間にわたり係わってきたこの日欧会議が、IARC発がん性評価の見直しやWHOの行動基準など、これまで成功裏に続いてきたことをうれしく思っております。
またそれ以降は環境やマーケティングの分野に重点を移し、CO2削減で最も重要なテーマである“建築物の省エネ、即ちエネルギー効率改善”でも大きな成果を収めてきています。これらの問題についても、これまで日欧米等で国際的な意見交換が出来たのではないかと思っております。
“建築物のエネルギー効率”という明るい未来のある課題に係わるこの会議に、今後とも協力していきますので宜しくお願い致します。 ありがとうございました。

 

ヤンテボス氏(新専務理事)

この会議に加わることができ、うれしく思っております。 以前勤務していた業界でも日本の産業界の方々との交流はありましたし、国際交流の重要性はよく理解しています。
グローバルなテーマである気候変動へのチャレンジ、エネルギー効率改善技術開発への取り組み、更に競合業界間で手を結んで取組むことは難しいことですが、EURIMAはこの“エネルギー効率”の問題を昨今の中心的テーマとして活動しています。それは、“私達の業界は、この解決方法の一端を担っている”と考えるからです。
EUでは、2020年までに温暖化ガスを20%削減する計画をもっており、現在各国でナショナルエネルギーアクションプランをまとめているところですが、我々は自信があります。
それは建物の“エネルギー効率”の改善なくして20%削減は出来得ないからです。
ユーリマは、政府のインセンティブ立法化支援を通じて省エネに寄与したいと考えています。
最近、ワシントンの会議に参加したところ、光栄にもIEAの田中新事務局長にお会いできた上、私達の“建築物のエネルギー効率”に対する活動について、賞賛まで頂ました。
今回の会議を通し、個人的な親交も深められればと思っております。

 

4.2 業界活動報告(Report on Industry Activities)

 

A-1. GFA西尾専務理事

1)2007年度重点施策事項

(1)GWの地位向上・普及率向上施策

?高性能断熱施工技術と知識の啓蒙・普及
?プロジェクト:マスメディアと共同で、全道を対象とした200mm断熱の普及活動
?優秀GW施工者の養成と適格者に対するマイスター制度の普及
?GW吹込み優良施工者の認定・登録制度の推進

(2)防火材料、構造等の共同研究

?防団協の住宅内外壁防火性能分科会第2ステージ活動への参加

(3)環境・安全衛生に関する活動

?グラスウールに対するGHS分類評価の実施
?長繊維の皮膚刺激性の基礎研究について北里大に研究委託
?広域認定制度の活用等による、効率的リサイクルシステム構築の検討
?GICメンバーとしてCO2削減:目標『 対1990年度比、2010年度に-10%』

(4)新JIS制度への対応力強化

?ホルムアルデヒド放散量判定方法JIS改正の推進(後詳報)

(5)グラスウールの長期性能検証の継続

 

2)GW短繊維の生産販売統計報告:略

 

A-2. RWA宮崎専務理事

1)2006年度生産販売状況

?総生産:31.2万t(前年比103%)、出荷量:30.9万t(105%)
?住宅用:11.1万t(前年比109%)と好調、07年度も前年並みの見込み。

 

2)2007年度の安全衛生・環境に関する主要活動

?保温断熱材のVOC放散分析実施:問題なし
?‘08年4月からの同大気放出民間自主規制対応
?住宅断熱材使用による省エネルギー及びCO2削減検討(シュミレーションによる解析(後詳報)
?RWのラットによる長期生体内溶解性評価実験の継続(北里大)
?製造事業所に於ける廃棄物リサイクル状況調査継続

 

B. EURIMAヤンテボス氏

1)会員概要:会員企業従業員数=2万人

(1)正式会員:8カ国、10社…-企業合併により企業数は減少するも生産量は増大
-EU域外からも参加~スイス、ノルウェー、トルコ、旧ユーゴスラビア諸国
(2)準会員企業:吸音ミネラル天井版メーカー2社
(3)準会員団体:各国の業界団体16協会(含EU域外)
-07年からロシア(ROSIZOL)が加盟

 

2)設立目的

断熱基準・規定の普及を目的に設立、“建築物のエネルギー効率”分野での先駆者として発展。
欧州での発言力増大

 

3)使命

『建物の省エネや健康安全についての科学的な研究により、欧州での議論、法制化に寄与する』
…この科学的研究による裏づけがあるお陰で欧州での議論に参加できている。

 

4)組織

(1)対外委員会(Joint Commission)
a.欧米豪3極:NAIMA / ICANZ(USA/AUSTRALLIA/NEW ZELAND)
b.欧米2極: NAIMA/ AMFATA/NAIMA CANADA(USA/Mexico/Canada)
c.対日:RWA/GFA
d.対中国:
e.国内:

?医学研究委員会(Joint European Medical Research Board):
-EU発がん性評価対応のため専門家による生体内溶解性繊維研究に取組み、大きな成果発揮。
?EuroACE(European Aliance of Energy Efficiency Building)~7年以上前建材業界で設立。
-設立理由:断熱だけでなく建物全体の省エネが重要なため横断的に結成。会長ビーダマン氏。
-活動-建物の省エネ推進 ⇒ 現在では、“建物のエネルギー効率に関する欧州代弁者の役割”
?対EC委員会活動:コンサルタントH.David)

 

2)3つの専門委員会:TC委員会について解説(他は後述)

(1)市場開発委員会:一般ユーザ、マスコミ、省エネ、環境、資金
(2)健康・安全委員会:規制、調査・研究、行政対応等
-REACH, ホルムアルデヒド発がん性区分等
(3)技術委員会:標準化、防耐火、断熱、吸音

◎ EURIMAの存在理由の根幹を成す重要な活動である

a.標準化活動

?防耐火基準(CEN/ISO):活発に活動
?熱性能:政治的な意味合いが増大
?環境関係:欧州では特に室内空気質(Indoor Air Quality)の重要性増大(CEN/TC351)
★欧州の特徴:個々の建材から放散される単一化学物質に対する議論から、カクテルのように、全室内構成建材から室内空気に対して放散される化学物質全体についての議論に変化
⇒ グリーン関係団体(環境保護団体)、ロビーストの活動活発化
?吸音:家購入時、省エネより防音など家の快適性の方が重視されるため重要な要素

b.標準化上の案件:

?CEN/TC88:反射断熱材(Reflective Foilsポリスチに多層アルミフォイル貼付した材料)
のCEマーク表示
?CEN/TC128:サンドイッチパネルの防火等級区分
-論点:現行評価法では製品に応じた評価法の変更を認めていないが、こうした材料がCE
マークの要求性能を持っているかどうか、評価法を変えて評価できるかどうかを議論。
?CEN/TC350:グリーン製品宣言EPD(Environmental Product Declaration)
-今後“ゆりかごから墓場まで”LCA的評価が重要
-こうした見方の市場への普及が課題

 

【Q&A】

Q(ビーダマン氏):Q1プロジェクトとして北海道で200mm断熱をやっているということであるが、これは寒冷地だけかあるいは日本全国での実施を考えているのか?
A:全国に200mm断熱を普及させるという意図ではなく、GWで充填+外張り併用断熱が出来る という意識の普及を狙っている。
Q1プロジェクトとは、熱損失係数1.0という意味で、国の基準では設備の省エネで達成しても良いということであるが、我々は断熱での実現を目指している。
200mm断熱の仕様は、高性能GW16K-100を充填及び外張すると言う意味。
Q(メンツァー氏):外張り100mmについて、図があれば後日送って欲しい。
A:送ります。

 

C. NAIMAメンツァー氏

1)組織

(1)メンバー; 米国、カナダ、メキシコのメーカー16社
(2)3つの専門部門とトピックス

? Market Growth-市場拡大
-新たに南西部及び南東部の2つの地域マネジャーを設置。
? Environment/Sustainability-環境・持続性
-当部門がNAIMAの将来に向けての牽引者となることを期待。
? Stewardship-総合品質安全管理( A. Crane):規制対応業務等所管

 

2)戦略ターゲット:下記6点

(1)“環境保護”と“エネルギー効率”の重要性の認識…今後不変の活動のキー
(2)ステークホルダーや公共に対し、グラスウール断熱材等の良さを啓蒙
(3)繊維系断熱材がクリーン環境や将来保障での第1選択肢として、既存・新築両市場での成長
(4)エネルギ効率改善という法的及び規制の支援を得ること
(5)製品の総合品質安全管理(stewardship)の推進
(6)地球規模のフォーラムへの参加

?2006年サブプライムローン問題で新築住宅着工30%減
?今後の政府・議会の対応を見ていく、救済措置を期待
?製品のstewardshipの面では、品質の良さ、断熱施工法などをPRしていく
?日欧会議とか、環境・製品性能・安全衛生・法的規制問題等に関するグローバルな会議に今後とも参加していく

 

4.3. 規制 (Regulatory/Classification)
4.3.1 一般規制

 

A. 日本側:GW/RWに係る労働衛生・環境関係法規制 富田氏

1)労働安全衛生法改正:GHS分類によるMSDS表示(H18.12.1施行)

・GHS導入MSDSの表示: JIS Z7250改訂(2005年)による
・但し、現行MSDS-JISZ7250:2000による記載:2010(H22)年12月31日まで有効

◎GFA切替目標:2008年12月31日

 

2)「GW/RWの労働衛生にかかる指針」(H15.1.1基発第1号)…厚労省にて見直し作業中

 

3)結晶性シリカの許容濃度…産業衛生学会‘07基準:0.03mg/㎥

【メンツァー氏】:米国カリフォルニア州でPEL(許容値Permissible Exposure Limits)変更 -シリカ吸入性粉じん:0.05 mg/㎥ ⇒ 0.0025mg/㎥

 

B. EURIMAドレイドレー氏

1)繊維の欧州分類:規制問題委員会

(1)皮膚に対する刺激性分類(Irritant – R38)の削除について

?‘06年10月4日の専門家と環境事務局との間で確認された
?公式承認:第31次改訂ATP( the Adaptation to Technical Progress)~07年末か08年初に
委員会(the Adaptation Technical Committee)開催見込み → 公表は09年6月
?ATP承認後、MSDS修正及び外装体に下記文と図をラベル表示(図参照)
皮膚と接触において、繊維の機械的影響により一時的なかゆみの原因となりことがあります”“The mechanical effect of fibres in contact with skin may cause temporary itching”

Q:GHS分類との整合性は?

A:EU指令Directive 97/69/ECでは、通常のグラスウール成型品はArticle(製品)なので
規制対象外。バルク品(無バインダーウール)のみがmaterial(物質)としてラベル表示必要。
しかし、自主規制として全製品に上記ラベル表示を実施する。 バルク品とは、ロックウールの吹付け用の一種である。

 

global_eurima_200710_img01

図:EURIMAラベル表示ピクトグラム

 

2)EUCEB(無機繊維の生体内溶解性欧州認証委員会European Certification Board of Mineral Wool)…産業界による自主的認証制度。逐次会員増加。

・現在35ヶ国(含欧州以外)、43社59工場の10種類の繊維について認定

 

3)ホルムアルデヒドの欧州発がん性分類

(1)経緯

?仏は、05年7月分類“1“『既知の発がん性Known carcinogenic』への変更を提案
?EU分類は、1996年より分類“3”『Possibly carcinogenic』で変更無し
?EU分類の結論は未決:“1”『Carcinogenic』or“2 ”『Probably carcinogenic』の可能性有り
?英等の反対有り、専門家による検討は停止、議論はREACHで行われる
?仏分類:欧州の決定が待てず“1“『As if classified as carcinogen』に決定(06年7月13日)
?工場作業工程には影響あるが、製品には影響ナシ
?米国環境保護局(NPA):2002年より分類“B1”=IARC:2A”、議論はされているが変化ナシ

⇒ 今後IRIS(Integrated Risk Information System)Programにより見直しされる

(2)ホルムアルデヒドの屋内空気質基準

?規制値:カナダ(’05)… 50 μg/㎥
?推奨値:・WHO(=日本) …100 (30分測定)
・カリフォルニア(’04)… 34
・独(‘06)… 123
?提案:・仏AFSSET…10 非常に厳しい

(3)【カムストラップ】独の研究論文によると、123μg/㎥以下では発がん性の可能性なし という報告が出ている。後の議論はその濃度以下で皮膚刺激性があるかどうかである。

 

4)ホウ酸塩(Borates-B2O3) に関する最新情報

(1)経緯

?第30次改訂ATPで専門家の分類提案は受け入れられた
?分類:カテゴリー“2”“ヒトの生殖に有害性がある”
?公表は、2009年6月になる
?ホウ酸塩使用工場には工程改善等影響あり、我々の製品そのものには何の影響もない
?上記見解を支持する2つの論文を用意している(英文版有り)
・英国GTS(Glass Technology Services)による「グラスウール断熱材中のホウ素」
・デンマークForce Technology「グラスウール断熱材中のホウ素のリスクアセスメント」
?EURIMAの見解は、EUにも認められていると考える

 

Q(富田):製品廃棄時には、ホルムアルデヒド及びホウ酸塩の問題はないか?

A:製品には含まれないので特に影響はない。またホルムアルデヒド及びホウ酸塩とも自然界に存在するものであることによく留意すること。

 

5)結晶性シリカ(Christalline Silica)-NEPSI

?2005年結晶性シリカ及び含有製品の取扱いについて作業者の安全確保の為、使用者、労働者、 EU委員会の3者による協議機関(Negotiation Platform)が設置された
?2006年4月結晶性シリカについて欧州の使用業界で、労使間で合意
?この合意書はNEPSIと呼称。内容は法規制ではなく自主規制、EU政府も支持
?合意概要:“良い取扱方法(Good Practices)”実施によるばく露低減・健康監視・報告等

 

C. 米国NAIMA:メンツァー氏

1)6価クロムの職業性暴露

(1)NAIMAは、業界の6価クロムの職業性暴露データベースを構築

-暴露量が少ないため新たな規制が適用されることはない

(2)California州の動向(もっとも厳しい)

-吸入性粉塵シリカPEL(許容暴露限度):0.05→0.025mg/㎥

(3)EPA(米国環境保護庁)

-VOC放散規制の提案:VOC含有製品のみ対象、その他

(4)OSHA(米国労働安全衛生局)

-吸入性結晶シリカの職業暴露、その他

(5)NTP(米国毒物計画)

-GWをリストから外すプロセスは3年遅れている。2008年に見直し予定

(6)ホルムアルデヒド

?第12次NTP-RoC (発がん物質報告) で“多分発がん物質Probable Known”

→“発がん物質Carcinogen”に改訂

?EPAは、統合危険物情報システムIRIS掲載物の毒性見直し中

 

4.3. 規制 (Regulatory/Classification)
4.3.2 GHSとREACH

 

A.EURIMAドレイドレー氏

1)REACH

(1)概要:

?年間1トン以上EU域内で生産・輸入される3万物質が、2008年6月~11月末迄に事前登録必要
?2010年11月~2018年6月迄に登録の添付技術資料(ドシエRegistration dossier)を作成
?REACHの対象:物質(Substance)及び調剤(=混合物Preperation)
?製品(Article)は対象外 ⇒ 通常のグラスウール製品は対象外

(2)無機繊維(Mineral Fiber)の扱い ⇒ 結論:“物質(Substance)と判断”

-EU域内に製品を輸出するときは適用外だが、バルクで輸出する際には適用となる

(3)EURIMAの無機繊維の定義案:既存のEU等級分類指令をベースに案を検討中

?登録上の疑問点:

-スラグとグラスウールは一つのドシエで良いか?…欧州では、GWとRWを区別しないでミネラルウールとして扱われている。
-生体内溶解性とそうではない繊維は、一つのドシエで良いか?

?下記の2定義の内どれに該当するか?

-第4章2.3:『定義された化学組成の物質及び他の主要化学物質』
-第4章3.1:『UVCB物質(Unknown or Variable Composition, Complex Products,
and Biological Material)』

(4)登録の添付技術資料(ドシエ)についての疑問

?どのようなテストをすればよいのか?
?どのくらいコストがかかるのか?

 

2)REACHとGHS

?2007年6月27日、欧州委員会は、物質の表示と分類についてのEC指令67/548/EECと 法令No1907/2006の改正を採択
?欧州議会と諮問委員会の共同決議の手順について議論される
?GHSによる上記指令改正が議会で採択されると、既存EU指令及び法令は失効する
?GHSとEU指令の比較:皮膚刺激と発がん性についてネガティブにならないか検討中

 

B. GHS対応:日本側
B-1. 富田氏(RWA)

1)法規制:労働安全衛生法改正(H18.12.1施行)

2)NITEによる評価と対応:人造鉱物繊維の代表としてRWを評価 … 表-1参照

表-1:ロックウールのGHS分類結果(NITE)

No. 危険・有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険・有害性情報
2 皮膚刺激性 区分3 警告 軽度の皮膚刺激
3 目に対する
刺激性
区分2A global_eurima_200710_img02 警告 強い眼刺激
4 呼吸器感作性と
皮膚感作性
分類できない
8 特定標的臓器・
全身毒性(単回暴露)
区分1(呼吸器系)
健康有害性
global_eurima_200710_img03 危険 臓器(呼吸器系)の障害
9 特定標的臓器・
全身毒性(反復暴露)
区分1(呼吸器系)
健康有害性
global_eurima_200710_img03 危険 長期又は反復暴露による臓器(呼吸器系)の障害

備考:*RWA意見~MSDSの様式は別として、EU, USと共通項の統一検討すべきである

 

B. EURIMAドレイドレー氏

-GWのGHS分類結果報告: NITE同等基準による分類(GFA対外委託業務)… 表-2参照
-グラスウールとロックウールのGHS比較…アンダーラインは、RWとGWの相違点

 

4.4 研究調査報告(Health & Safety / Scientific)

 

A-1. 日本側:松岡

1)ミネラルウールのホルムアルデヒドF4等級判定試験方法JIS改正-第2報-

?2003年建築基準法改正にともない建材のF放散等級表示
?現行JIS小型チャンバー法での試料負荷率L=2.2は、建築基準法での定義L=10と相違
?検査精度向上のためにL=10によるF☆☆☆☆判定を提案。
?大臣認定試験法について、同様の改正案が国土交通省コンタクトポイントに提案有り

⇒ 評価の結果検査法改正決定。JIS改正を申請する。

表-2: グラスウールのGHS分類

No. 危険・有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険・有害性情報
2 皮膚刺激性 区分2 global_eurima_200710_img02 警告 皮膚刺激
3 目に対する
刺激性
区分2B 警告 目への刺激
4 呼吸器感作性と
皮膚感作性
分類できない
8 単回暴露による
特定臓器毒性
区分3 global_eurima_200710_img02 警告 一時的な気道刺激性
9 反復暴露による
特定臓器毒性
分類できない

 

4.5 Energy/Environment/Marketing

 

A-1. 日本側:日本建材住宅設備産業協会 鈴木調査部長(特別ゲスト)

○テーマ:地球温暖化対策と新省エネルギー基準の動向について

 

1)住宅建築関連の省エネルギー施策の動向

2)今後予想される省エネ対策:2008年3~8月頃住宅・建築の省エネ基準
改正、運用強化

(1)省エネ基準の改正、運用強化

?2000?以上建物:適合義務化と2000?以下の建物:省エネ届出義務化
?2000?以下の建物への規制
?省エネリフォーム(断熱&高効率設備)の減税(所得税+固定資産税)

-一定効果ある省エネ改修工事に対し、その費用の10%相当額(上限20万円)所得税控除
-固定資産税を3年間1/2に減額
-フラット35S(長期固定金利住宅ローン):償還期間35年⇒50年へ延長

(2)外皮と設備の総合評価による新しい省エネ基準

?設備機器を省エネ評価対象に追加…暖房、冷房、給湯、換気、照明機器
?建物の断熱性:暖冷房消費削減で評価
?創エネ(太陽光、発電、燃料電池コージェネなど)も評価

(3)住宅の格付け(可視可)

?住宅性能表示制度

-従来より消費者に分り易い共通のものさし作り、住宅性能比較を容易にする

?CASBEE

 

Q&A

Q:日本政府の省エネ目標達成の期日はあるのか?
A:来年の洞爺湖サミットに向け、現在、再調整中
Q:省エネ住宅にはパッシブ住宅も含まれるのか?
A:スゥエーデンなどに習い日本でもゼロエネルギー住宅などの取り組みは見られるが、まだ本格的なものではない。
A:EU,EuroAce等いろいろなところで研究されている。来年の会議では報告したい。

 

A-2. 日本側:山田氏(RWA)

○テーマ:「一般住宅の室内温熱解析ソフトの概要と事例紹介」

?シュミレーションソフト:米国クアトロ社製多数室間温熱解析ソフト「TRNSYS」
?特徴:住まい方も反映した省エネ効果が得られる
?解析作業を始めたところで、今後は省エネやCO2削減効果の把握に使用する

 

A-3. 日本側:松村氏(GFA)

○テーマ:「2006年度断熱建材のLCCO2 JIS化活動 – 断熱性能の経年変化」

?2004年からの経緯、2007年度には算定方法のJIS原案を作成
?断熱材の長期性能の評価調査において一部発泡系断熱材でJISを下回る値が報告された

 

B. EURIMA:ヤンテボス氏

1) 政府機関に対するロビー活動

◎キャッチフレーズ「最もすぐれた持続可能なエネルギーとは、省エネである」

-2番目:再生可能エネルギー、3番目:効率的な化石燃料の使用

 

2)欧州での鍵となる数字:

?エネルギー消費量全体の40%が、建物で使われている
?省エネによるCO2削減のポテンシャルは、年間4.66億万t、金額で2700億ユーロ、
56万人分の雇用等があるが、犠牲になるものは何もない
?東ヨーロッパの既築住宅の断熱改修の必要性急迫:財政面脆弱⇒基金設置不可欠

 

3)Ecofys?:U-Valueの定義と位置づけに関する研究報告

?EUの現行断熱基準は、省エネCO2削減上必要なレベルより遥かに低いレベルである
?欧州の新築・既築建築物を最適コストで省エネできる最低断熱基準が設定可能
?その最適コストとなる断熱基準=U-Valueとは
?断熱施工費(+コスト)と省エネ効果(-コスト)の合計値とU-Value熱貫流率(W/?K)の関係で決まる
?『コスト最小値となるU-Valueが最適点』⇒この観点で断熱基準を決めるのが合理的
?エネルギーコストが上がるとU値も変化

 

C. NAIMAメンツァー氏

1)気候変動-温暖化ガス

LCA評価において、『GWの製造時のCO2発生量は、1年間のGW使用時のCO2削減により相殺される』ことを主張。

?既存住宅の改修による省エネ
?NAIMA の主張

・グラスウール等のミネラルウール断熱材は持続可能でコストパフォーマンスが高い製品
・将来のエネルギー危機に対して第1番目の選択肢である

?NAIMACanada:各州の断熱基準更新について紹介有り

 

4.6国際活動報告(Report on International Activity

 

A. EURIMA:ビーダーマン氏

1) NAIMA/ ICANZ(USA/AUSTRALLIA/NEW ZELAND) との3極提携による活動強化

(1)国際商工会議所ICC(トルコ)

・今年のトルコの会議の報告に建物の省エネが盛り込まれた
・Energy efficiencyの重要性に対する各国企業の認識大
・従来ICCは供給側(石油業界)が強く、これは画期的なこと

(2)IEA国際エネルギー機関

・2007年9月IEA(田中事務局長)の活動に対し、米国の省エネ推進機関(Alliance to
save energy)からInternational Star of Energy Efficiency賞が授与された。
・今年のハイリゲンダムG8サミットでのIEAの報告に、建築の項目が盛り込まれた。
・IEAは、加盟国及び発展途上国の新築建物の断熱基準や省エネ政策の総合的な調査報告をまとめ中。またこの分析結果に基づき、建物の省エネ最適施策を開発中である。
・キーメッセージ:「新築および既存の建物のエネルギー効率の改善から得られる省エネ のポテンシャルは巨大である」

(3)G8サミット

・IEAの報告は2006年のグレンイーグルズG8の行動計画に基づくもの
・2008年の洞爺湖サミットでは、既存建物についての報告が行われる

(4)REEEP(Renewable Energy and Energy Efficiency Partnership )「再生可能なエネルギーとエネルギー効率のための協力」

・省エネ普及のためのEEC(Energy Efficiency Coalition)を立ち上げる

(5)Energy Efficiency Global Conference1(11月ワシントン):EURIMA、NAIMA共同で出展

(6)国際合同会議: 欧・米・豪(2007年4月、於メルボルン)

・共同データベースの構築やリスボン宣言の改訂
・今後拡大を目指し、中国やマレーシアの断熱材工業会ともコンンタクト中

(7)COP??気候変動枠組条約国会議(2007年12月3-14日 於バリ)

・ICCやREEEPと協力して参加する
・京都議定書以降の枠組みの検討
・USAの動向が注目される

 

4.6 閉会挨拶

 

A. 日本側:朝生RWA環境委員長

欧米からの貴重な情報をありがとうございました。EURIMAの皆さんが、地球温暖化について消費者だけでなく、国の政策に対しても働きかけをされていることには、強いインパクトを受けました。残念ながら日本では業界の影響力は小さいので、今後は、RWAとGFAの働きかけの一体化を一層進めたいと思います。また、GHS有害性分類のRWについて、「危険」との分類がなされたことについては、欧米の情報もいただき、できるだけ早く反論しなければならないと思っております。日本の市場環境は極めてよくありませんが、RW, GWの良さを宣伝して業界を発展させ、来年も、リスボンでお会いしたいと思います。

 

B. EURIMA側:ヤンテボス氏

初めての訪日でしたが、業界として中身のあるものを発信できるよう頑張っていきたいと思います。 地域により課題の異なることもありますが、お互いに情報を交換し最善策を見つけることが重要です。 従来とは違って、省エネはやらなければならないという気運が高まっており、積極的に政策決定に参画できるチャンスです。“断熱”とは、費用が掛るということではなく、“Save Money省マネー”というメッセージを強く発信することにより、明るい未来が開けてくると確信しております。
日本側の報告は興味深く、良い刺激材料になりましたので、帰って同僚に伝えたいと思います。 この会議に参加できたことにお礼を述べるとともに、次回リスボンでお会いしたいと思います。

以上

 

次回開催予定: ポルトガル リスボンにて  2008年10月23日~24日

Copyright © Glass Fiber Association. All Rights Reserved.