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第12回定期会議報告

欧州断熱材製造業者協会(EURIMA)との第12回定期会議報告

環境委員会
副委員長 神谷 健二
主査 松 岡 修

 

硝子繊維協会環境委員会は、平成18年11月8日~9日の日程にて、昨年の会場の東京から、今回は、2004年の拡大欧州連合(EU)での新規加盟国10カ国の一つであるチェコ共和国首都プラハのインターコンチネンタルホテルに会場を移し、欧州のEURIMA(欧州断熱材製造業者協会)と硝子繊維協会(GFA)/ロックウール工業会(RWA)との第12回定期会議を開催した。 今回もオブザーバーとして米国のNAIMA(北米断熱材製造業者協会)代表が参加した。以下は、定期会議の要約である。

 
●日 程:平成18年11月8日(水)~9日(木)
●場 所: チェコ共和国 インターコンチネンタルプラハホテル
●出席者:(総計:12名)

○欧州:EURIMA (3名)

Mr. H. Biedermann (ビーダーマン氏:EURIMA 専務理事)
Dr. O. Kamstrup (カムストラップ氏:ロックウール インターナショナル社)
Dr. A. de Reydellet (ドレイドレー氏:サンゴバン社)

○硝子繊維協会(GFA)-環境委員会(3名)

狐塚委員長、神谷副委員長、松岡主査

○ロックウール工業会(RWA) -環境委員会(3名)

朝生委員長(JFE)、富田主査(ニチアス)、宮崎専務理事

注:社名略称、 NRW- 日本ロックウール、 NA-ニチアス、NTB- 日東紡、大建 – 大建工業、A&A- エーアンドエーマテリアル、JFE -JFE ロックファイバー、を示す。

○NAIMA (1名)

Mr. K. Menzer (メンツアー氏:NAIMA会長)

○通訳  (2名)

高塚、関野

 

4.会議議事次第及び要旨

 

4.1 挨拶

 

A.EURIMA代表(ビーダーマン氏)

第12回日欧会議の会場であるプラハにようこそお集まり頂きました。“Golden City”、“More beautiful Venice”といわれるすばらしいプラハの街をぜひご自分の目で確かめて頂ければと思います。この会議も、当初の健康安全性から、市場動向を踏まえより先を見た議論に変わってきました。EUは、15カ国から2004年に現在の25カ国となり、更に2007年には27カ国、そして更に増え続ける状況です。どこまで欧州を拡大するのかという議論もありますが、EURIMAとしては、エネルギーの効率化(省エネ)を新しい地域でも大いに展開していく方針です。
建築エネルギーの効率化指令(EPBD)の更なる拡大を目指し、活動に取り組んでいます。
皆様との有意義な交流を持てることをうれしく思っております。

 

B.日本代表:朝生RWA環境委員長

第1回目と同じ場所で開催される会議に感慨深く、招聘されたことに感謝申し上げます。この3極による情報交換と協力は、地球温暖化 COP 、 ILO , IARC など、国際的な取り組みについて、意義深いものであり、成功裏に進んでいると思います。欧州では、 EU が25ヶ国に拡大しましたが、環境は新旧いずれの地域でも重要な分野です。
EURIMA は、東欧およびロシアまで拡大し、マーケティング、安全健康問題に取り組んでいます。欧州市場は、‘ 97 年以降の統計資料はありませんが、ドイツを除いて好調です。NAIMA,EURIMA を代表して、会議の成功を祈っています。

 

4.2 業界活動報告(Report on Industry Activities)

 

A.EURIMA代表(ビーダーマン氏)

1)EURIMAの概要:欧州の他、会員が投資しているトルコやロシア地域もカバーしている。

①1959年の創立以来、断熱材の標準化と規制の改善に取組んできた。
②正式メンバー:現在12メーカー(10ヶ国)。
③非公式メンバー:Heraklith社とTemo D.D.社は、Knauf社に、Izocam社はSaint-Gobain社と合併し、9社となる。
④準メンバー:天井吸音板(仏・独)の2メーカー
⑤EU各国の協会メンバー:昨年12 → 現在16協会。EU拡大で増加中。議決権、会費は無い

2)使命:業界の共通利益のために、有利な(positive)規制や基準についての働き掛けを行う。

3)組織:

①新会長: ヤコブ ソーレンセン氏 (ロックウールインターナショナル社) 6月より
②専務理事:ビーダーマン氏、今年度で退職、顧問として残る。

4)共同委員会(Joint Commission)

①国際関係:

欧米豪3極-NAIMA / ICANZ(USA/Australia/New Zealand)
欧米2極-NAIMA / AMFATA/CAMMVF(USA/Mexico/Canada)
欧 日-RWA/GFA

②健康問題:Joint European Medical Research Board(JEMRB)
IARCの発がん性評価見直しに重要な活動実施、現在休止中。安全・健康面を中心に著名科学者が多数参加。将来の問題発生時に備え存続を決定した。
③他業界連携:EuroACE … 建材業界で設立、建材関係の規制でEU政府への働きかけ
省エネ推進圧力団体。

5)関連機関:EUCEB

◎ミネラルウール表示規制(EU指令97/69/EC)の除外規定(NotaQ-生体内溶解性繊維BSFの適合判定)を行う欧州認証委員会。EUCEB参加会社36社、48工場が認証取得済。

6)対EC委員会ロビー活動 担当:コンサルタント(デービッド氏)

7)トピックス:新時代に対応して、EURIMAのロゴを刷新

8)3つの専門委員会

(1) 市場開発委員会(MDC)担当:エステベス氏…開発資金業務を追加
(2) 技術委員会(TC) 担当:ハーセンス氏

① 6つのプロジェクト(TP)… セルロズファイバーの沈下、高温λ測定、アセンブリ-用SBI試験、等
② 9つのアクティビティ(TA)…8つのTC
CEN/ISO:建築防火安全、断熱材、建築用吸音材、金属サンドイッチパネル、等の規格化に参加
従来テーマから環境関係テーマに重点が移行してきている

(注:プロジェクトとアクティビティ~前者トは、リサーチを伴い、後者は、観察と進捗を見守る活動)

(3) 健康と安全委員会(HSC)担当:ディアス氏

①規制問題を所管
②規制の実態を調査、等

 

B-1.RWA宮崎専務理事

1)組織概要説明 役員交代

①理事長 田中→奥本(ニチアス専務)。 副会長 江崎→朝生(JFE)
②環境委員長  江崎→朝生

2)05年度生産販売状況

①総生産量29.7万トン(前年比95%)、出荷量29.1万トン(94%)
②住宅用は、前年比96%…住宅用断熱材普及促進のために、新たに「住宅用断熱材部会」を設置した。技術委員会及びPR委員会から構成される。
③断熱用マットは厚手化(55→75、100mm)により6.8万トン(前年比106%)で好調

3)06年度の安全衛生・環境に関する主要活動

①RWの皮膚への影響度に関する調査研究(北里大と連携)
②RWのラット肺内動態に関する研究(繊維の溶解性評価実験)の継続
③アスベスト関連:石綿含有RW天井板からのアスベスト飛散有無の調査実施。
④労働安全衛生法施行令改正(2006年9月1日):石綿関係
⑤ロックウールの安全性に関するパンフレット作成と配布

 

Q:天井板を使用している人はアスベストが含まれていることを知っているのか?
A:一般のひとでもかなり知っている。用途は、住宅ではなく、90%以上はビルなど。
Q:石綿の使用は何時やめたのか?
A:1985年以降使用していない。
Q:2006年は需要の転換点か?
A:総生産量減により、1工場閉鎖された。

 

B-2.GFA狐塚環境委員長

1)組織概要説明 会長、副会長 交替 略

・加盟社数:11→12社 … AFG社の長繊維部門→OC社に売却、新規入会。

2)06年度重点施策事項

(1)GWの普及促進活動

①工務店に対する断熱施工セミナーの開催
②充填断熱施工技術者認定制度(マイスター)

 

Q:認定者は何人ぐらいか? A:年間数十人。
Q:ドイツと同じですね。とても良い施策だ。

 

③GW吹込み優良施工技術者の認定登録制度

(2)防火材料、構造等の共同研究

・防団協の中に設置された、住宅内外壁防火性能分科会活動に参画

(3)環境・安全衛生

① GHSの国内法への導入に対する対応:
-北里大への皮膚刺激性試験の委託(RWAと共同)
② 広域認定制度の活用等による、効率的リサイクルシステムの構築
・GICメンバーとしてCO2削減目標を設定

 

Q:目標値は?
A:1990年度比で2010年度に、-10%(国の目標は-6%)

(4)短繊維および長繊維の生産販売統計報告:省略

 

C.NAIMAメンツァー氏

1)組織

(1)メンバー16社、増加傾向
(2)3部門は、以下の様に再編成された~

①Market Growth(市場拡大)

②Environment/Sustainability(環境/持続性)

③Stewardship(良き管理者)

(3)07年度予算では新人3名採用

 

Q:技術関係はどの部門が担当するのか?
A:各部門が横断的に行っている

 

2)戦略的方向性

戦略的な組織に再編成するために調査を行ったが、その結果、「断熱」することが最も省エネ・エネルギー効率アップに優れ、温暖化防止に寄与できる対策だと確信し、①~③の3部門に再編成した。日欧米の各業界が我々の製品の優位性を確信し、競合材料・製品に対してリーダーシップを持つべきである。

 

(1)市場拡大…新築・既存住宅の断熱市場での拡大、鉱物繊維の優位性の周知など。
(2)環境/持続性…鉱物繊維は、環境に対して最も相応しい選択肢であることを、株主に認識させる。またユニークでグリーンな製品であることを強調。・防団協の中に設置された、住宅内外壁防火性能分科会活動に参画
(3)良き管理者養成…品質や安全性に対し、科学的なデータを基に前向きに積極的に取り組む。

他素材はこの活動をあまりやっていない。

 

Q:市場の成長は?
A:2005年度は記録的な生産量であった。今年は住宅着工が落ち込んできているが、商業分野が伸びてきている。住宅着工のブームは7-8年続くサイクルだが、今回は5年間続いた。今後は、住宅の改修がよくなる。
Q:Stewardshipとは、どのような活動と理解すれば良いのか?
A:競合材料に対する我々の製品の優位性・メリットを、あらゆる機会を見つけてタイムリーに市場に訴えることである。競合材料業界は、R値、安全性、品質保証に重点を置いていないので我々の活動が有効である。全営業社員がこれを身につけて欲しい。

(注:日本語にはピッタリの言葉が無いので通訳は、「良き管理者」と訳した。)

 

4.3 規制 (Regulatory/Classification)

 

A.EURIMA カムストラップ氏とドレイドレー氏

1)皮膚に対する刺激性分類(Irritant – R38)の削除について
…刺激性分類は削除された

(1)10月4日の専門家と環境事務局との間で確認された。2007年春に公表される。
(2)いかなる代償事項もないが、公表後は、次の公約を実施する。

①MSDS
②梱包上の情報表示:
“皮膚と接触において、繊維の機械的影響により一時的なかゆみの原因となりことがあります”…これを示すピクトグラム(表示図)を検討中

2)ホルムアルデヒドの発がん性分類変更(3→1:IARC)の仏提案について

(1)欧州での議論は、NCIの最新の研究結果が公表される2007年5月(遅れる?)迄延期された。

①提案された職業暴露限界値:0.2ppm(8時間平均)と0.4ppm(15分間平均)
→ 樹脂製造など化学業界からの反対のロビー活動がある
②フランスの規制(2007年1月1日施行):ホルムアルデヒドに暴露される作業は、発がん性物質と同様の管理が必要。…危険性評価、代替化、閉鎖系、換気、PPE、等

 

Q:発がん性物質のカテゴリーはどこまで入るのか?
A:仏独自ではなく、EU基準の分類による。仏政府は、過去に石綿対応で後手に回り非難を受けたので、今回は、早めの対応策をとっている。仏国内だけで、EU全体には拡大されない。作業環境に対する規制であり、製品への規制ではない。

3)ホウ酸塩(Borates)の発がん性分類変更について

①まだ分類されていない。
②「人の生殖に対して毒性があるかもしれない」ことから、カテゴリー”3”になるかもしれない。
(非公式なニュースでは、製造業はこのレベルで妥協する?)

4)結晶性シリカ(crystalline silica)

・2005年結晶性シリカ及び含有製品の取扱いについて作業者の安全確保の為、使用者、労働者、EU委員会、の3者による協議機関(Negotiation Platform)が設置された
・EURIMAは、GWが関係するため参加
・労働者側との協議が06年4月に合意した。EURIMAも署名。この合意は、EUからも支持されている。
・2007年度は、正しい取扱い法(Good practice)、暴露レベルの測定、作業者の健康調査など実施状況を報告。これを基に、2008年度最終実施報告を出す。

 

Q:暴露レベルの基準は?
A:国によって異なる。 基準を下げたり、最大値を定めたりしている。
数年前に、IARCの分類が“1”になったが、EUでは、分類を考えていない。
欧州では用途が広く影響が大きいため、とても分類できる状態にはない。
Q:この件で、米国のGW工場(OC)が閉鎖になったという情報がWEB上にあったが?
A:そういう事実はない(NAIMAメンツァー氏)。

5)REACHとGHS

・REACHは、2008年に発効するが、EUではこれにGHSも織り込むことを考えており、発がん性の分類方法について比較している。 IARC, EU, GHSの3つの分類基準は異なっており、国によってGHSの分類が違ってくる可能性がある。EUはGHSワーキンググループで比較検討中。

6)GHS基準の発がん性分類とIARC&EU分類との比較:

IARC GHS EU
1 1A 1
2A 1B 2
3A 2 3
3
4

 

7)ホルムアルデヒドプロジェクト:

(1)MMMF製品からのホルムアルデヒトの放散実験結果:

ⅰ 裸品:40日放置後、初期値の30%でまで減衰し安定(20μg/m²h)
ⅱ 石膏ボード+MMVF:最初増加し、その後裸品と同レベルまで減衰
ⅲ 石膏ボード+フォイル(アルミ蒸着防湿シートの意)+MMVF … 実際の使用条件を反映

① 放散量は低レベルで安定(10μg/m2h以下)
② フォイルにより放散量は50 %に抑制される
③ 典型的な低室内空気質のホルムアルデヒト濃度と同程度
④ GWとRWで放散量に差は無かった
⑤ 今回はスモールチャンバー法で試験したが、次はフルスケールチャンバー法で行う。

 

Q:欧州のホルムアルデヒド放散量の基準はあるのか?
A:欧州基準は無い。フィンランドの自主規制値がある…28日後、50μg/m²hを参考にしている。
HYPERLINK “http://www.RTSFI” http://www.RTSFI にて試験基準が公開されている。

8)EUCEB(無機繊維の欧州認証委員会):資料のみで説明なし。

 

B.日本側:RWA富田氏

1)労働衛生法施行令の改正

(1)表示(製品ラベル)及び文書交付(MSDS)のGHS導入(表示項目、絵表)06.12.01施行
本年初より、国の規制対象化学物質約1500を対象に、環境・経済産業・厚生労働省等の合同にてGHSにもとづく分類が実施されており、事務局の独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)から順次公表されており、7月末にRWの分類結果が発表された。
以下の分類に対し、RWAでは、不合理な分類について意見を提出した

 

分類番号 項目 分類結果 シンボル 注意喚起 有害性情報 対応
皮膚刺激性 区分3 警告 物理的刺激 問題なし
4 眼刺激性 区分2A 感嘆符 警告 1週間で回復しない 意見
6 発がん性 区分外 IARC 3 問題なし
8 臓器毒性(単回) 区分1 健康有害性 危険 吸入による 意見
9 同上(反復暴露) 区分1 (呼吸器系) 同上 ラットでの線維化 意見

 

★RWA提出意見内容:
① 異物に対する反応(繊維状<粒子)であって、物質の問題ではない
② EUは、眼刺激性はないと、決定している

 

この結果は、今回の会議に参加している各地域の業界にとって、きわめて重大な共通問題であり、以下のような、行動計画が採択された。

 

ⅰ. 眼刺激性については、90年代にEURIMAが分類回避の為に使用した論文をRWAに提供する
…12月末までに、EURIMAカムストラップ、ディアス両氏が担当する
ⅱ. 呼吸器系臓器に対する毒性分類1について
・今回分類のベースになった文献を入手する(宮崎)
・同上および訂正に有効な文献を入手する。
…上記3点を12月末までに、カムストラップ氏とNAIMAアンガス クレイン氏が担当する
ⅲ . GHS分類を実施したすべての国のリストを作成し、人造鉱物繊維の分類を調査する
…12月末までに、EURIMAドレイドレー氏が担当する
ⅳ . 日本で、RWを分類したGHS基準について調査する
…12月末までに、カムストラップ氏とクレイン氏が担当する

 

★ 以上の情報収集後、それらについて討議し、かつ今後のより詳細な活動計画作成のための会議を2007年初めに開催することも考慮する。

 

2)「GW/RWの労働衛生にかかる指針」(1993年)の見直し

IARCの見直しを受け、厚生労働省の委託により「石綿代替繊維委員会」(事務局:中災防)が8月に発足し、指針の内容緩和を検討している。
07年3月までに報告書をまとめ、4月以降に新たな通達(指針)を出す予定。セラミックファイバーやウィスカーも対象となる。

 

C.米国側:メンツァー氏

1)6価クロムの職業性暴露

・OSHAが、06年2月28日に最終規則を公布した。
・この規則では、NAIMAが出した業界の工場測定データに基づく多くの意見が反映された。

2)米国毒物計画(NTPリスト)からグラスウール削除の請願について

・次回第12回RoCでGW削除が検討される。
・1、2年の内には削除が完了する見込み

3)オゾン移動委員会(OTC)

・大気清浄法の下に東部13州で組織。 NOx等の排出規制により地上レベルでのオゾン問題の解決をはかる。
・OTCは、ガラス/RW工場を規制対象に挙げており、他の硝子産業とともに最新のデータを提供する。

4)GHS(地球規模調和システム)

・「OSHAは、規制へのGHS-2005の導入を提案した
・NAIMAは、OSHAの提案について質問を準備している

5)環境・持続性

・「砂を使用した製品=迅速に再生可能な資源である」
…この記事を、人造鉱物繊維のPRに活用する

6)ILOの“Code of Practice”の見直し(緩和)について

・「砂を使用した製品=迅速に再生可能な資源である」
…この記事を、人造鉱物繊維のPRに活用する
・博士は、本年4月3日に改正原案を発表した。
・適切な改正に向かって前進している
・Code of Practiceは、国内法への導入・整備が遅れている。 ロシアや中国等の発展途上国では法律に取り込まれている

 

Q:改正原案を日本にも送って欲しい。
A:了解

★ビーダーマン氏とメンツァー氏は、来年開催される省エネルギー協力国際会議の準備に関する国際電話会議への参加のため、一時退席された。

 

4.4 研究調査報告(Health & Safety/Scientific)

 

B-1.日本側:富田氏

1)GW/RWのウサギにおける皮膚一次刺激性試験結果中間報告(富田)

・北里大学医学部皮膚科へのGFA/RWA共同委託研究として取り組み中
・基本的には、EURIMAがドイツで実施した試験方法に準拠して実施している。
・RW4種(2社製品、バインダーなし、ショットなし)、GW4種(住宅用3社製品、バインダーなし)
・現在まで、すべての試験で刺激反応は出ていない。

 

Q:北里大皮膚科の先生からは、この実験条件の設定過程について、どのようにして実験条件が決められたのか質問されている
A(EURIMA):
・欧州での皮膚刺激の判定には、動物実験及び現場作業者に対する皮膚障害の有無の2点で判定される。動物実験方法は、EUの規定である。
・繊維に触れた初期に作業者の一部で一時的に発生する赤い発疹とかゆみの症状は、化学的炎症ではなく、機械的な接触による反応「メカニカル イフェクト」である。欧州でも当初議論はあったが、2002年にそのような見解で承認されている。

 

B-2.日本側:松岡

1)欧州規制RoHSとガラス中の微量成分の分析法の標準化(松岡)

・現状では、欧州規制対象のPb, Cd, Hg, Cr6+の微量定量分析方法がなく、市場からのデータ提出要求に応えられないため、GICとして標準マニュアルを作成した。
・07年度以降JIS及びISO化を計画している。
・今回のマニュアルは、Pb, Cdを対象に作成した。
・水銀(Hg)は高温溶解中に揮発・消失するため、ガラス中には含まれない。
これを測定により立証しようとすると、試料溶解作業中に消失するため非常に難しい。
・Cr6+は、非常に不安定な物質のため、6価の状態での分析法には適切な方法がなく、全Cr分析とした。

Q(日):EU,米国ではどのように対処しているのか。
A(ドレイドレー氏):
欧州では、メーカーの宣言文で了解してもらっている。ユーザーと長い論議の末、含有していないというメーカー説明で了解を得られたので、データの提出は求められない。
ASTMがRoHS対応の分析方法を検討中との情報あり…後日、化学雑誌「ChemADVISORY Vol.31 July2005-p5」に掲載されたその記事を送付して頂いた。

 

4.5 Energy/Environment/Marketing

 

A.EURIMA代表(ビーダーマン氏)

…EU当局、各国政府への働きかけ

1)Ecofys?の発行…資源原油高騰下により、断熱効果見直しを実施。建築物における断熱・省エネによる経済効果の感度分析を、EU15カ国及び拡大25カ国で研究・報告した。

2)マンガキャラクター「Bob Builder」によるキャンペーン(10/26)

3)IEE(Intelligent Energy Europe)プロジェクト

・ファンド総額:5億ユーロ=約750億円
・EU新加盟国向け支援基金の対象に、住宅の断熱改修を加える

4)グリーンペーパ(EUのエネルギー戦略)に基づく省エネ実行計画(07-13)

・毎年1.5 %削減への対応
・1000?以下の住宅の省エネが重要。全体の90%を占めている。
→建物エネルギー効率指令EPBDの対象拡大、基準アップ (パッシブハウス採用など)
・既築住宅のリノベーションを規定化すること及び新築・既築対象に最低要求性能(Minimum Performance Requirements )を規定するよう提案している。
・その場合、例えば、屋根でも適用されるように要素(Component)を折り込むことに苦労している
・また普及上こうした対応へのファイナンスをどうするかも重要である。

5)EIP(European Insulation Platform)発泡系など他素材との連携

・年3-4回会合、フェアな競争、広告の実現。
・メンバー:ポリウレタン業界、押出発泡ポリスチレン業界、ビーズ発泡ポリスチレン業界、EURIMAで構成
・費用分担:総予算10万ユーロ(約1500万円)、内3/4を発泡系で負担、1/4をEURIMA
・これまでは第1段階の活動。現在は第2段階に入っており、CO2排出抑制研究など発泡系と共同で進める。
・エネルギー研究所ECN/CEPSとの共同研究:欧州における気候変動抑制のための費用と効果についての政策
◎「断熱がもっとも費用対効果がよい方法である」

6)欧州気候別断熱基準地図プロジェクト( EU Climate Zones PJ)

7)トピックス:新時代に対応して、EURIMAのロゴを刷新

・米国と同じように欧州全域での断熱基準地図をつくる-Ecofys社担当
・06年末または07年初に完了見込み ⇒ 地図はEUのコミッショナーに持っていく。

 

B.日本側:松岡及び神谷

1)自然起源放射性物質(NORM)含有物質利用ガイドラインについて(松岡)

・国際放射線防護委員会ICPRの勧告を受け、文科省がガイドライン案提示。
・ガイドラインでの規制案は、国際標準の1mSv/Year, Year=8760hr
・ガラス連合会(GIC)は文科省に対して、実測値から年間8760hrでは、ジルコン煉瓦を使用した窯周り、窯の解体、築炉作業時に問題があるとして、実作業時間に基づく被爆評価時間の具体的な規定化を要請した。
・現在、文科省で検討中(公表は大幅に遅れる模様)

Q:欧米での取り組みは?
A:

① 欧州では、仏でガラス産業セクターとして調査プロジェクトを開始したところ。07年中頃には報告書が出る。出たら日本にも送る。
ストーンウールはスラグ中に若干NORMを含んでおり、原子力発電所でNORMが原因で使用拒否された事がある。ただしその被爆量は非常に少ない。
② (後刻メンツァー氏より)帰国したら調べてみるが、目下のところ米国ではまだ聞いていない。

2)断熱建材のLCCO2算出法のJIS化について(神谷)

・05年度より、経産省、国交省委託の委員会でISOとの調和を考慮しながら取り組み中
・07年度には、JIS原案を作成予定

 

4.6 国際活動報告(Report on International Activity)

 

A.EURIMA代表(ビーダーマン氏)

1)REEEPワークショップ:「再生可能なエネルギーとエネルギー効率のための協力」
(Renewable Energy and Energy Efficiency Partnership )

・06年4月、ウイーンで、EURIMA、REEEP及びEuroACE、NAIMAによる第3回ワークショップを開催、計80名が参加。欧州アクションプラン作成にまで持っていく。

2)「建築物に関するG8会議」に対するIEAの取り組みについて

◎2005年7月建築分野における省エネ・効率化に関するG8-グレンイーグルス サミットが開催された。そのワークショップで決定した国際エネルギー機関(IEA)の今後の活動計画について:

・IEAよりEuroAce、EURIMA、NAIMAへ協力要請あり会議に参加。
・Ecofysの断熱と費用効果のデータが使用された
・新築住宅の断熱基準や既存住宅につての政策について提案したい
・建築における省エネポテンシャルは既存住宅の50%=全エネルギー消費の20%
・調査検討結果は、2008年の日本でのG8で正式報告される
・G8へスーパー断熱材などの情報提供必要→日本側でも何か情報があれば出して欲しい。
・GW/RWによる断熱は、ビルディングプロジェクトの解決策である。
→業界として建築分野の省エネルギーを押し進める絶好のチャンス
・2007年11月27, 28日にIEAと打ち合わせを行う予定。
・京都議定書会議以降のEURIMAの取り組みは、国際的に認知されてきており、重要な政治的課題になっている。
・昨年の東京での日欧会議以降、種々の前向きの動きあり非常に有意義である。

 

B.NAIMAメンツァー

1)アジア太平洋パートナーシップ-クリーン開発と気候

・自主的で、非法律的な情報交換、相互協力会議
・参加国:米国(議長)、オーストラリア、中国、インド、日本、韓国
・06年第1回(カリフォルニア)その後、韓国の斉州島、オーストラリアで開催予定
・8つの業界別部会-Naimaは、建物および機器部会にオブザーバーとして参加
・日本の国土交通省から品確法についての強力なプレゼンテーションがあった
…この法律で取り上げている大部分の評価分野で断熱材が寄与できるからである。
米国でもPRしたい。

2)省エネルギー協力ASE国際会議 (Alliance to Save Energy Global Summit)

・第1回06年1月1日ワシントンで開催
・第2回会議:2007年11月12-14日ワシントンで開催することが決定
・参加者は、1000名程度でNAIMA, EURIMAが建築分野の事務局。GFA/RWAも参加発表可能。
・目的:国際的な省エネルギー製品、サービスの市場育成
省エネルギーの政策的優位性について議論。毎年の定期会議にする

 

4.7 閉会挨拶

 

A.EURIMA代表(ビーダーマン氏)

今回のミィーティングが非常に有意義なものであったことを大変うれしく思っております。お互いに必要な情報交換が行われると共に、3つの地域で、別々に行われていたことが、例えば、GHSの問題については、共同して進めるというような重要なプランが実現にむけて動き出すなど大きな成果が得られました。国際関係では、IEAによるエネルギー効率問題についてもG8の議長国となるドイツに対して、色々な情報提供が出来る状況にあります。この機会を利用して、さらなるプロモーション活動を進めたいと思います。
最後に、参加していただいた皆様のすばらしい研究や報告にあらためて、感謝申し上げます。

 

B.日本側:狐塚GFA環境委員長

2日間の有意義な会議が出来て非常にうれしく思っております。 また、準備に当たられた方々にもお礼を申し上げます。 地球温暖化の問題は、人類として真剣かつ速やかに取り組まなければならない問題です。しかしながら、国々によって取り組み方にも温度差があります。この分野で我々のビジネスは、断熱・省エネの面で、大いに貢献できるものと思っています。
日本市場は、人口の減少により、住宅着工の減少が懸念されておりますが、住宅の質の向上、既存住宅の改修などにより、需要の拡大が出来るものと思っております。このためにも、GW/RWだけではなく、他の断熱材とも協力し、政治的なパワーを大きくすることが必要だと考えています。
今回の会議は、初めて参加しましたが、その重要性について、改めて再認識致しました。GHSに共同で対処するなど、新しいテーマも増えてくるのはないかと思っていますS。
今後も、この会議を継続し、成果を挙げることを期待しております。
最後に、今回でビーダーマン氏がリタイヤすると聞き驚きましたが、次回の北海道には、参加されると聞いてうれしく思っております。
来年、北海道札幌でお会いできることを、楽しみにしております。

 

★ 次回開催予定:札幌にて2007年10月17日~18日

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