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第11回定期会議報告

欧州断熱材製造業者協会(EURIMA)との第11回定期会議報告

 

文責:硝子繊維協会短繊維部会・防火材料管理委員会
委員長 松 岡 修

硝子繊維協会環境委員会は、平成 17 年 11 月 8 日~ 9 日に東京パレスホテルを会場に、欧州の EURIMA (欧州断熱材製造業者協会)と硝子繊維協会( GFA )/ロックウール 工業会( RWA ) との第 11 回定期会議を開催した。 今回もオブザーバーとして米国の NAIMA (北米断熱材製造業者協会)代表が参加した。以下は、定期会議の要約である。

 

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●日 程:平成17年11月8日(火)~9日(水)
●場 所:東京 パレスホテル
●出席者:(総計:23名)

○欧州:EURIMA (3名)

Mr. H. Biedermann (ビーダーマン氏:EURIMA 専務理事)
Dr. O. Kamstrup (カムストラップ氏:ロックウール インターナショナル社)
Dr. A. de Reydellet (ドレイドレー氏:サンゴバン社)

○硝子繊維協会(GFA)-環境委員会(8名)

木村委員長、和田HS部会長、大滝、影山、清水、鈴木各委員及び 神谷、松岡
ロックウール工業会(RWA) -環境委員会(9名)
江崎委員長( NRW )、宮崎専務理事、富田 (NA) 委員、
相馬( NTB )、荒木(大建)、 浅見( A&A )、
近藤 直 (太平洋マテリアル)、山田( JFE RF ) , 近藤 雅 ( NRW )

注:社名略称、 NRW- 日本ロックウール 、 NA- ニチアス、 NTB- 日東紡、大建 – 大建工業、A&A- エーアンドエーマテリアル、JFE -JFE ロックファイバー、を示す。

○米国(オブザーバー): NAIMA (1名)

Mr. K. Menzer (メンツアー氏:NAIMA会長)

○通訳(2名)

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4.会議議事次第及び要旨

 

4.1 挨拶

 

●日本代表:木村 GFA 環境委員長

京都議定書が発効しましたが、日本では、まだ追い風になっていません。今回の会議で、欧米での業界が情報発信源となった行政や関係先への省エネにつての働きかけについてのお話を聞けることを期待しております。

 

●EURIMA 代表(ビーダーマン氏)

第1回目と同じ場所で開催される会議に感慨深く、招聘されたことに感謝申し上げます。この3極による情報交換と協力は、地球温暖化 COP 、 ILO , IARC など、国際的な取り組みについて、意義深いものであり、成功裏に進んでいると思います。欧州では、 EU が25ヶ国に拡大しましたが、環境は新旧いずれの地域でも重要な分野です。
EURIMA は、東欧およびロシアまで拡大し、マーケティング、安全健康問題に取り組んでいます。欧州市場は、‘ 97 年以降の統計資料はありませんが、ドイツを除いて好調です。NAIMA,EURIMA を代表して、会議の成功を祈っています。

 

4.2 業界活動報告(Report on Industry Activities)

 

A-1.GFA

● 鈴木専務理事

1)組織概要説明:副会長 交替

2) 主な委員会活動報告

・防火材料および構造に関する共同研究参加(前年度からの継続事業)
・市場からの廃製品リサイクルの取り組み(同上)
・高断熱化の推進(同上)
・CO2削減自主計画の取り組み

3) 短繊維および長繊維の生産販売統計報告

・対前年度比生産量:短繊維101%、長繊維 95%
・対前年度比販売量:短繊維101%、長繊維 106%

 

Q:CO2削減計画の内容は?
Ans.テーマアップされたばかりで具体的な議論は次年度からである。
Q:米国では最近アジアから保温筒の輸出が増えているが、日本ではGWの輸入はあるのか?
Ans.ほとんどない。
Q:米国ではホームセンターでの販売比率が高い。
日本国内販売のルートは?
Ans.おもに流通業者経由で、ホームセンターでの小売りはほとんどない。

 

A-2.RWA

●宮崎専務理事

1)組織概要説明

・役員交代:会長 相良→田中(ニチアス)、副会長 奥本→大内(NTB)
・環境委員長: 奥本→江崎(日本RW)

2) 2005年度の安全健康環境に関する主な活動

(1)RWの肺内特性について北里大と共同研究継続

(2)目及び皮膚刺激について北里大と共同研究(準備中)→GFAと共同で進めたい

(3)主なアスベスト対応施策:

・石綿とRWの違いについての広報-HP
・石綿含有天井板を施工した部屋の空気中の石綿繊維飛散の測定実施
・石綿含有製品リストを公開

(4)2004年度の製造会社の廃棄物リサイクル調査

(5)その他-JIS認証システム変更のための改訂支援

3) 生産販売統計

・ 前年比生産103%、出荷101%、住宅用が107%で好調

 

Q:日本で石綿の使用を中止したのはいつか?
Ans.吹付け1980年、天井板1988年
◎欧米のコメント-EU:RWとアスベストを混ぜて使用したことはない。
USA:米国では、保温筒、床材で問題があったが、天井板では聞いていない。
◎RWA-日本の天井板の技術は米国アームストロング社からの導入で、その組成に基づいて石綿を混入していた。

 

Q:日本では断熱の厚手化が進んでいるとの報告であるが、現在の平均厚さは?
Ans.GW、RWとも75mm程度である。
Q:日本で石綿が騒がれはじめたきっかけは何か?
Ans.クボタが従業員ではなく周辺住民被害発生を発表したことが契機である。

 

B. EURIMA

●ビーダーマン氏

1)組織概要:欧州の他、会員が投資しているトルコやロシア地域もカバーしている。

(1)正式メンバー:12メーカー(10ヶ国)…昨年1社減(トルコ企業が脱退)
(2)準メンバー:天井吸音板メーカー(仏・独)の2社
(3)代表権のない準メンバー:各国の協会-14カ国協会。
~スロバキア、チェコ、ポーランド等、東欧でも協会が設立されている。
(4)使命:業界の共通の利益のために、有利な(positive)規制や基準についての働き掛けを行う。
(5)共通業務(ビーダーマン氏担当)

・国際関係:

欧米豪3極-NAIMA /ICANZ(USA/AUSTRALLIA/NEW ZELAND)
欧米2極-NAIMA/ AMFATA/CAMMVF(USA/Mexico/Canada)
欧日-RWA/GFA

・他業界連携:

EuroACE … 建材業界で設立、建材関係の規制でEU政府への働きかけ-省エネ推進圧力団体。

・健康問題:

Joint European Medical Research Board(JEMRB)

◎ IARCの発がん性評価見直しに重要な活動を行った。
目的を達成し主要活動は終了。
英国に慈善団体として登録してあるので、
今後はこの機能を活かす。

・関連機関:EUCEB

◎ミネラルウール表示規制(EU指令97/69/EC)の
除外規定(NotaQ-生体内溶解性繊維BSFの適合判定)を
行う欧州認証委員会。
EUCEB参加会社36社、48工場が認証取得済。

(6)対EC委員会ロビー活動 担当:コンサルタント(デービッド氏)
(7)3つの専門委員会

a. 技術委員会(TC) 担当:ハーセンス氏
・6つのプロジェクト(TP)…
セルロズファイバーの沈下、高温λ測定、など
・9つのアクティビティ(TA)
… CEN-8つのTC(断熱材、建築防火安全、室内空気室、等)ISO-6つのTC(環境、熱、吸音、耐火、等)

注:プロジェクトとアクティビティの違い… プロジェクトは、リサーチがある。アクティビティは、観察と進捗を見守る活動。

b.市場開発委員会(MDC)担当:エステベス氏
c.健康と安全委員会(HSC)担当:ディアス氏 … 6つのプロジェクト
・HSP55:皮膚刺激性分類(R38)の削除
・HSP56:有害性廃棄物
・HSP60:繊維関係データベース
・HSP62:ホルムアルデヒド放散抑制
・HSP63:室内空気室(Indoor air:CEN-TC264)
・HSP64:規制物質関係(CEN TC)-ホルムアルデヒド、ラドン、粒子状物質、VOC類

 

Q:EURIMAが統計調査をやめた理由は?
Ans. 1997年に競合する企業間でm3、回転率、トン、?等の統計情報を共有することは独禁法上問題があるとのEC委員会で議論あり。石膏ボード業界の統計内容の違法性を指摘、多額の罰金を科したことから中止した。その後メンバーから復活要請があり、毎年協議している。外部にも相談しているが、会員の中に石膏ボード業界のメンバーが入っているため反対が強く、意見が一致していない。
Q:欧州に長繊維の生産者団体はあるのか? Ans. ある。後日ドレイドレー氏から連絡する。
Q:CEN TC128「Roof covering products」とはどんな製品ですか?
Ans. 詳細はわからないので、あとで連絡する
Q:EURIMAの活動対象地域にロシアがはいっているのは何故か?
Ans. 国としてはEUメンバーでないが、サンゴバン社、ロックウールインターナショナル社等がすでにビジネスでロシア国内に進出しているため。近くEURIMAメンバーに加入の見込み。

 

C. NAIMA

●メンツァー氏

1)組織

・メンバー14社。 米国業界の中でGardian Products社だけが加入していない。
・スタッフ:Product(市場拡大)、Administration(総務)、Regulatory(規制)の3グループ10名。

 

2)トピックス

・姉妹団体としてNAIMA Canadaが設立された。
・メンバー6社だが、業界で3社加盟していない。

Q:バブルシート(反射断熱材)という製品が日本にも進出してきているが、米国市場での状況は?
Ans.

○米国では、温暖な地域の一部で売れているが量は少ない。 メーカーの燃焼試験が公表されていないので、NAIMAが別途火災実験を行い公表する予定。 市場で生き残れる特性を持っていない。
○欧州では状況が異なる。特に、フランス、イギリス、オーストリアなどで、安さで売れているので注視している(ビーダーマン氏)。

 

3)その他

-結晶性シリカ

・NAIMA:カリフォルニアでモニタリング開始
・OSHA :連邦、カリフォルニアで規制について検討中
・裁判所:訴訟の判例

-HSPP(OSHAとのパートナーシッププロジェクト)~8年計画の6年を終了。

・今後のありかた:規制にならない自主基準の継続について検討する。

 

4.3 規制及び等級区分(Regulatory/Classification)

 

A-1.

GW/RWに係る労働衛生・環境関係法規制 富田氏

1)労働衛生法規の変更点

-粉塵許容濃度の計算式改正:2004年4月施行

・GW/RW:3.0mg/m3(注:変更内容-分子:旧2.9 → 新3.0、分母:旧0.22→新0.59)
・新式E=3.0/(0.59・Q+1)mg/m3、Q=粉じん中の遊離けい酸含有率(%)

-日本産業衛生学会:2005年度案版「作業環境許容濃度指針」変更

・GW/RWは、発がん物質から削除
・GW/RWとしての許容濃度(皮膚刺激が主)として、1f/cm3%)

2)環境関係

-大気汚染防止法:乾燥設備等からのVOC放散が規制されることになったが、GW / RWは対象外。業界自主規制はある

3)GHS(地球規模調和システム)

・危険物、有害物の表示の国際統一化。 2006 年末施行に向け、国内関係法令調整中。

 

Q : GHS の分類で、日本はどのレベルを目指しているのか?
Ans. 表示の必要のないレベル。そのためのテストを計画しており、 GFA/RWA 共同で進めたいと考えている。

○ EURIMA :この会議メンバー日欧米3極でグローバルレベルで共同歩調を取るべきである。WGの設置を提案する。→賛成である。前向きに進めたい(日本)。

 

B. EURIMA

●カムストラップ氏及びドレイドレー氏

1) 皮膚に対する刺激性( Irritant Classification R38 )の削除

(1)違反には制裁を含む、法的拘束力を持たせた自主的な包装体表示(注意書とシンボルマーク)を EURIMA として提案し、適応の除外を申請する。 12 月の 14 - 17 日の検討委員会で審議される。
(2)表示案:「皮膚と繊維の接触による機械的な影響により、一時的なかゆみの原因になることがあります。」

 

Q:X i の削除が目的か?
Ans. はい

 

2) 特殊用途ガラス繊維( E- ガラス及び 475 ガラス)

・EU の現在の発がん性分類“3”(= IARC 2B )…化学組成による判断フランスより発がん性分類変更提案:“3”⇒ 分類“2”

 

3) ホルムアルデヒド

(1)フランスより発がん性分類変更提案 … 欧州の現在の分類“3”(= IARC 2B )

・IARC =“1”( 2004 年 6 月変更)により、分類“3”⇒ 分類“1”(= IARC “1”)。
・EPA (米)は、“2 A

 

IARC EU EPA
1 1 1
2A 2 2A
2B 3 2B

参考: IARC,   EU,  米国 EPA の分類レベルの関係

 

(2)ホルムアルデヒド表示規制

・ 全ての天井板にホルムアルデヒド含有に関する情報提供を義務化: 2006 年 1 月 1 日施行
・ CE マーク「断熱材の熱性の保証」による放散速度表示の義務化
・ 表示内容:放散測定結果により下記3種の何れか選択
「放散ナシ」: No content
「 × 」:クラス -E2
「◎」:クラス -E1  …ベスト。ほとんどの GW/RW が属する
・ 初期型式検査( ENV717-1 )… 放散量< 0.124 mg/m 3   air
・ 工場製品検査( EN717-2 (orEN120 ))… 放散速度< 3.5 mg/m 2 /h

 

(3) ホルムアルデヒドプロジェクト

・ EURIMA 安全衛生委員会( HSC )に設置‐予算:400万円。
・ メンバー:各社から5名の委員参加によるタスクフォース。
・ 目的 :

○第三者機関の実験室内に、適切に施工されたミネラルウールからは、バインダータイプに関係なく(フェノールバインダー使用製品、ホルムアルデヒドフリー製品、“ Green 関連製品”のセルローズファイバーも関係なく)、室内空気中には、健康への信頼を損ねるような量のホルムアルデヒドが放散されないことを実測により立証すること。
○信用のある科学誌に発表し、その研究論文に信頼性を持たせること、更に権威ある室内環境国際会議で発表すること。

4)結晶性シリカ( crystalline silica )

・ 結晶性シリカ及び含有製品の取扱いについて作業者の安全確保のため、使用者、労働者、EU 委員会、の3者による協議機関( Negotiation Platform )の設置。
・ 合意課題:正しい取扱い法( Good practice )、曝露レベルの測定方法、作業者の健康調査
・ 2006 年 3 月合意目標でスタートする見込み
・ EURIMA は、 GW が関係するため参加

 

5)ホウ酸塩( Borates ):

・ 危険物質に関する提案について EU の決定を待機
・ EU は、ホウ酸塩を生殖性毒性<分類 -2 >に入れるかどうか検討中( ATP 30th )
・ 対象含有製品: B 2 O 3 換算 3.1 重量%以上で議論されている
・ EURIMA は、<分類 -2 >が妥当と考えている 。
・ 確定しだい、“ Position Statement ” & “ Q&A ” を作成予定。

 

6)建築物指令( Construction Product Directory: CPD89/106/EEC )

・ CEN に新たな TC (技術委員会)が設置され検討中。
・ 内容:土壌、水質、大気への汚染物質放散について規制化予定。
~公衆衛生上、健康上、環境への基本要請項目( ER )の解釈

Q :ミネラルウールの規制上、旧い建物が解体される時、断熱材はどのような扱いになるのか?
Ans.

○独では分類“ 2 ”と“ 3 ”は危険物なので除外されないが、 20 - 30 年たった過去の製品の免除規定適合証明は困難。危険廃棄物は地中の岩塩採掘跡に捨てられている。

他の国では問題にならず、解体時作業者が保護具の着用に注意する程度でよい。また、国によって廃棄物の基準が異なり、廃棄物の区別を検討中の国もある。今後取り扱われるべき問題である。

 

Q :独 -MAK の発がん性分類の“ as if III“は、現在もあるのか?
Ans. 無い。現在は、分類”II“(動物実験で有害性有り)以外は”III“である

7) BAT ( B est of A vailable T echnique )

・1999 年制定、 2000 年 10 月公開された。
・ EU では、2006 年にアップデート予定~ガラスセクター(GW,RW等が該当)の改訂がある。

8) REACH

・ 新しい進展無し。
・ EU 委員会が、 2005 年末までにドラフトを採択すれば、当初計画では 2008 年発効の予定。

 

C. 米国NAIMA

●メンツアー氏 :(資料省略)

1) NTP

IARC の 2002 年の評価変更により、GW の評価見直しの検討開始が決定した。
ホルムアルデヒドを“1”に分類

2) IARC の石綿代替ワークショップ

・ EURIMA 等と連携してハドレー博士を業界代表のオブザーバーとして出席させた。

 

Q :この会議で、新たに開発された繊維も議論されるのか?
Ans. わからない。

3) ILO の“ Code of Practice ”の見直し(緩和) について

・ 見直しが決定した。  ILO の担当者は友好的。
・ 昨年、 EURIMA より少なくとも IARC 再評価結果による変更部分を“ Code of Practice ”に添付するよう要請したが、 IARC 再評価結果を別刷りしただけであった。
・ EURIMA より見直し内容として開発国の負担削減のため、作業者の暴露測定のみで
健康診断義務の削除を要請している。

 

Q : 今回、見直し作業費用の国際分担はあるのか?
Ans. ない。前回より作業は小規模である。

 

4.4 研究調査報告(Health & Safety/Scientific)

 

A. 日本
A-1.RWA

●富田氏

1) ロックウール製造工程における VOC 作業環境濃度調査結果

◇ 測定目的:労働者のシックハウス防止のため中災防により実施した

(1) ホルムアルデヒド

・作業場所:30 箇所のうち1箇所のみ特定作業環境基準( 0.25ppm )オーバー
・個人暴露: 32 名中 2 名が WHO 基準( 0.08ppm )オーバー

(2) VOC :問題なし

 

Q :工場での清掃時やメンテ時の濃度は通常より高くなると思うが測定はしているのか?また夏の方が値は高くなると思う。
Ans. 測定していない。 測定義務はなく自主判断で国のガイドラインに適合するように努めている。
Q :欧州ではどうか?
Ans. 欧米も工場の自主判断で測定実施している。
Q : EURIMA の HP の Q&A の中で工場でのホルム放散が改善されたとあるが、これまでの改善状況は?
Ans.

○[ ドレイドレー氏 ] サンゴバンの例では、 1970 年代にホルムのレベル測定を開始して以降低下。バインダーの品質及び換気が改善されている。
○[ カムストラップ氏 ] 問題作業領域については無人化し、作業者曝露を抑制している。欧州の新しい暴露基準は 0.2 mg/m3

 

A-2 GFA

1) ミネラルウールのホルムアルデヒド放散等級判定
試験方法の改善 (松岡):

◇ 概要:

(1)市場対応上全製品を F ☆☆☆☆ 等級にしていること。
(2)現行 JIS の F ☆☆☆☆等級判定試験方法が建築基準法の定義と異なること
(3)定義通りの判定法提案のため開発研究に取組んでいること、等について紹介。

 

Q :詳細な報告で欧州での議論にも有意義である。市場に対して、断熱材は直接部屋の空気に触れないのだから、室内空気に影響を及ぼさないという説明はしているのか?
Ans.住宅会社にとって、工事業者が使用場所別、等級別に使用量を管理するのは煩雑であること、また施主に対しては、健康安全住宅というイメージを訴えるため、 F ☆☆☆☆等級のものを要求してくる。

2) ガラス繊維製造作業従事者のX線胸部写真調査 (神谷):

◇ 概要:

(1) 過去に実施された労働省調査、及び業界調査に続き、今回第 3 回目の調査を実施。
(2)傘下の長短ガラス繊維工場従業員を対象に、平成 12 年~平成 16 年の X 線直接撮影フィルムを再読影調査の結果、ガラス繊維が原因となる障害は認められなかった。

 

Q : 読影は、 ILO の方法か?
Ans. いいえ。日本のじん肺法に基づく判定基準による。
Q : 欧州では、ガラス繊維の健康問題は解決したと考えている。X線暴露は、それ自体健康影響がある。撮影検診と被爆とどちらが健康影響が大きいか検討しているか?
Ans. 日本でも最近そういう議論がはじまっている。

3) ガラス繊維の健康安全性の普及活動につて (松岡):

◇ 概要:

(1)アスベスト被害の問題が大きく報道されて以降、長短ガラス繊維の健康影響について市場不安が増大、消費者をはじめ市場から企業、協会、行政等への問合せが急増。
(2) 市場に対して、アスベストとは全く異なる安全な材料であること等の正しい説明のため誰にも分かり易いパンフレットを作成。
(3)長繊維:和文版 8 千枚、英語版準備中。
GW : 10 万 5 千枚配布。⇒ その結果、市場からの問合せが激減した、等を紹介。

 

Q : ガラス繊維作業者からのリアクションはないのか?
Ans. 特にない。安全性を再認識した。
Q : 他社(発泡)からのネガティブキャンペーンは?
Ans. 今回はない。
Q : 消費者に正しく答えられるよう営業マン研修はしたのか?
Ans. していない。個々の営業マンでは回答がバラバラになるので、一般ユーザーが見ても分かるような平易なパンフレットを作った。
Q : RWの対応は?
Ans.

・ これから旧家屋の解体等が増大するが、粉塵等に注意しないと全く安全(じん肺症)とは言い切れないので、グラスウールのような安全宣言印刷物は作らなかった。
・ 過去に石綿含有品があり、それに関する問い合わせが多い。

 

4.5 国際活動報告(Report on International Activity)

 

A. 米国NAIMA

● メンツァー氏

1) REEEP ( R enewable E nergy and E nergy E fficiency P artnership ) 「再生可能なエネルギーとエネルギー効率のための協力」

(1)REEEP のパートナーになっている。
(2)「持続可能な発展」の地球環境サミットから生まれた国際団体。
(3)当初は再生エネルギーが中心であったが、 NAIMA が積極的に働きかけた結果、「建物のエネルギー効率改善」も取組み課題に入れることに成功した。日本も是非加入して欲しい。
(4)2006 年に欧州(ウィーン)とアジア(北京か上海)でワークショップ開催予定。
(5)基金は政府が出しているので(英国6百万ユーロ)、パートナーの費用負担はない。

 

Q :アジアリークショップに参加するため経産省に問い合わせたが詳細は分からなかったが?
Ans.. REEEP では、政府レベルの参加を期待している。 GFA,RWA がパートナーとして自主的に参加することが重要。逆に、環境省や政府に働きかけて欲しい。

2) UNEP 「国連環境プログラム」

(1)EURIMA,NAIMA が参加
(2)「 Sustainable Development 委員会」から、来年提案が出される
(3)建築物、産業におけるエネルギーの効率(省エネ)を課題に入れる
(4)発展途上国の省エネ実施圧力となる

 

B. EURIMA

● ビーダーマン 氏:

◇ NAIMA/ ICANZ(USA/AUSTRIA/NEW ZELAND) との3極提携による活動強化

(1) 国際商工会議所 ICC のエネルギー委員会メンバーに参加
供給側ばかりで、需要側のポリシーが欠けていた。省エネ提案を盛り込む。来週パリの委員会で採択。
(2) IAEA 「国際エネルギー機関」の事務総長と面会
-断熱強化により建物関係で放散される CO2 削減の検討を申し入れた。
(3) 12月開催のカナダモントリオールでの COP11 に参加する
-リスボン宣言のアップデート
(4) REEEP と共同で ECOFYS 調査結果を報告等、多くの国際的な議論の場で建物の省エネを提案。
今まで、バラバラな動きであったものが、統一された形になりつつある。

 

4.6 Energy/Environment/Marketing

 

A. 日本側

1)「 SB05TOKYO 」報告 (松岡)

-世界の主要な環境性能評価法( BEAMS, LEED, GBTool, CASBEE )間の比較

○ 概要:

・ 事例研究報告から、標記の宇都宮大学と関西電力との共同研究発表について紹介。
4つの手法に夫々特徴はあるが、概ね同じ様な評価結果を得た。

2)断熱建材の LCCO2 の JIS 化(神谷)

-経済産業省の委託を受けて建材産業協会が事務局として取組む標記プロジェクトの概要と進捗を報告。

3)省エネ基準と断熱材(荒木)

-建築物の省エネを中心に地球温暖化防止への欧州業界の取組みに対して、日本の状況を説明するために当テーマを取り上げて報告。日本の状況が良くまとめられた内容であった。

 

Q :住宅を改修する場合何か義務はあるか? 欧州では、既存の基準を満たす必要がある。
Ans. 耐震についてはあるが、省エネについてはない。 日本も義務化したい。
Q :次世代省エネ基準以降の断熱基準はあるのか?
Ans.ない。主流である木造軸組の充填工法では、すでに厚さが限界。
環境対応として自立循環型住宅がある。

○ ( メンツァー氏 ) : 最低基準をアップしていく米国,カナダ、メキシコも同じ戦略である。米国では既存の再断熱すべき住宅は 7000 万戸あり、持ち主への啓蒙、インセンティブが重要である

 

B. 米国

● ビーダーマン 氏:

1)この2年間、受動的な( REACTVE )活動から、より積極的な( PROACTIVE )活動に切り替え、欧州市場開発に取り組んできた。活動の展開はプロセスは、

(1) 我々の業界がどう見られているのかを調査を実施 断熱材は、省エネに非常に有効であるが、コストが問題。EU の政策と合致できるポイントは、

・CO2 削減にエネルギー使用の 40 %を占める建築物の果たす役割は大きい。
・省エネで現行EU外部へのエネルギー依存率 70 %の危険性を減らすことができる。
・省エネ投資による工事が、新たな雇用創出となる。

(2) これらの結果をもとに内部の platform を構築
(3) 外部に対する行動を開始、継続する。政策に反映させる。

2)具体的な活動の経過

(1) EU15 ヵ国に対する EPBD 指令( 1000m2以上の改修、断熱義務化)では、 400 万トンの CO2 全潜在削減量のうち 82 万トンしか削減できないという Ecofys-IIレポートをまとめ、“ He‘s not happy”というキャンペーンを実施。
(2) 2005 年 1 月 19 日に政治家や法律立案者を加えたレーンストーミングを実施。
断熱材の有効性をよりわかりやすくまとめたリーフレット作成( Nutshell )これに対し、コスト効率はどうかという、質問が多くでたので、
(3) Ecofys-IIIで、 EPBD の投資コスト効果分析を実施。この報告を基に、“Mineral Wool Insulation, Proven Return” というキャンペーン実施。
(4) 2005 年 3 月 15,16 日に、 EU 議会のエネルギーと環境委員会開催中に展示会を開催。 環境局長官や欧州議会議員の断熱効果に対する認識向上に成果。
(5) Ecofys-IV /Vで、新規 EU 加盟 10 ヵ国の省エネコスト分析を実施。
これらの国では、エネルギーコストが安く、旧 EU15 カ国程効率は良くないが、23 万人の新しい雇用が創出される。今後、さらに EPBD の対象拡大を目指し、活動を続けていく。最近の石油価格急騰は、コスト効果をさらにアップさせる。

3)今後の活動計画

(1) 新加盟国における、経済状況を反映したエネルギーコストおよび金利をもとにした断熱投資効果の評価調査 Ecofys-VIを計画中。
(2) EPBD の対象拡大を声を大にして、叫び続ける。
(3) 特に新たな新加盟国のために、 EU 基金を設ける。

 

C. NAIMA

●メンツァー氏

1)新エネルギー法(8月5日大統領署名)による普及促進政策
2)建築物省エネ対策: 27 億ドルの税制優遇

-新築住宅 28 百万ドル、既存住宅 5.6 億ドル、商業ビル 2.4 億ドル

3)一般新築住宅の省エネ奨励金

・最新のミニマムコード(省エネ基準)より、 50 %改善された場合 2000 ドル
・この 50 %のうち少なくとも1/5が、建物外皮(壁、天井、窓)であること
・2006 年1月 1 日から 2007 年 12 月 31 日まで

4)新築プレハブ住宅

・EPAのエネルギースターラベル住宅に対し、 1000 ドル

5)既存住宅

・規定の省エネ改善費用の 10 %、最大 500 ドル、窓は上乗せ 200 ドル

6)エネルギー法の主な政策項目

-産業分野での自主削減目標  2.5 %/年

・低所得者住宅のエネルギー補助
・公共の建物は 2004 年度版 IECC(International Energy Conservation Code) 省エネ基準による

7)NAIMA の対応:このエネルギー法の浸透を目指すキャンペーンを計画している

(1)IECC2006 年版が公表 . これに適合する推奨断熱仕様の PR
(2)産業向け 3E(Energy,Environmet,Economics) Plus 「最適断熱厚み計算プログラム」

 

Q :戸建て住宅の総費用は?
Ans. 平均 247 千ドル。 2000 ドルはその1%

 

4.7 閉会挨拶

 

B. 日本側

● 江崎 RWA 環境委員長

健康問題において提案のあったヒフ刺激問題については共同調査については是非実施していきたいとおもいます。欧米に較べると、地球環境に対する日本の対応は相当遅れており、具体化を進めてゆきたいと思います。
断熱市場については、欧州では需要が確実に増加しており、米国では生産が追いつかないとお聞きし、まことにうらやましい限りである。今後、日本にも必ずブームが来るものと期待しています。
この会議でのもう一つの成果は、日本のGWとRW両業界のよい交流の場になっており、このことは2つの業界にとって非常に有意義なものであると感じたことです。

 

A. EURIMA側

●ビーダーマン氏

EURIMAの唯一の問題となっているヒフ刺激の共同研究は是非やりたい。
GW,RW両協会へ、合併して“JIMA”を設立することを提案したい。
これから、エネルギー市場にはいろいろなことがおこります。世界的に建築物の省エネルギーの有効性について、メッセージを発する必要があります。欧州では、政策に反映するよう政治に対する働きかけを継続的に行っています。この活動には、発泡系を含めた省エネ推進の広範囲のプラットフォームをつくっています。
京都議定書の2012年以降をにらんで、 CO2削減には、原子力や Renewable Energy より断熱が優れていることを訴えていきたいと思います。

 

★ 次回開催予定:プラハにて   2006 年11月8日~ 9日 。

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